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Let's put a new coat of paint on this lonesome ol' town. Set 'em up we'll be knockin 'em down. You wear adress baby,I'll wear a tie. We'll laugh at that ol' bloodshot moon In that burgundy sky(TOM WAITS).
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2011
04,05
11:31
もの思う小石
CATEGORY[☆未消化シノプシス]
緩やかな渓流のかたわらにあって、水と常に寄り添う河辺。
無数に散らばる砂利の中に、"もの思う小石"があった。
ーーーーーーー
『俺には手も足も無いが夢見ることは出来る。
俺の夢はこの川の対岸へ渡り別の世界をこの体で感じることだ。』
ーーーーーーー
小石は常に心泡立つ者だった。
ーーーーーーー
『俺には目玉もないから、この川の流れを眺めることは叶わないが、音の振動を感じることで川の深さや幅を想像して楽しんでいる。
そしてその想像は、まんざら外れているわけでもないだろう。
透明な水下の藻をかき分け、魚がいそいそと探し物をする。
夏には直下する陽光を反射する水面の鏡。
その温度で俺たち河辺の石ころは灼熱の地獄だが、夕方に降る雨は俺たちの火照った体を優しく洗い流してくれる。
そうしてやがて秋になる。
おもしろいもので、俺たち河辺の小石の大半は、秋になったことに気付かない者が多い。
それは、ともすれば、秋という季節が、夏の日の夕暮れに似ているからかもしれない。
木々の葉が乾きはじめ、抵抗することなく風に乗り始めた頃、皆ようやく気づきはじめるのだ、今が秋という季節であることを。
すぐに風が冷気を運んで来るだろう。
それはそれは冷たい風だ。
この頃になると、辺りから動物たちの息づかいが聞こえなくなる。
川も、やがて流水の音を閉ざし、かつての饒舌さは影を潜める。
これが冬というものだ。
喧騒はしばしの休息。
凍えんばかりの寒さが訪れる訳だが、この静けさは、なかなかに悪いものではない。
朝には時折、地中より押し出される霜柱の茎が、俺の体を散歩させてくれることもある。
その突然の褒美に、俺は内心踊りたくなるほどに嬉しいのだが、残酷なことに俺は踊りというものを知らずに今日に至る。
雪が降り積もり、しびれるほどの寒さの中にあっても、楽しみとは静かに存在するものだ。
それらを見つめよう。
けして抗うことなく。
そうして春を待とう。
あたたかな春が来るのを。
雪解けの音を待つのだ。
川の時間がゆっくりと動き出すのを待つのだ。
川が再びぎこちない流れを紡ぎ出す頃、川辺には草花の赤子が、ここはどこですか?というような表情で顔を赤らめる。
ご覧なさい、これが春の世界ですよ、と眠りから覚めたカエルたちが草花たちに教えて回るだろう。
野兎や熊たちが、乾きを癒やさんと川に集う。
春の宴のはじまりだ。
川面はこの時期、喜びに満ち溢れる。
鳥の鼻歌。
蛇も陽気に踊り、蟻は春蜜の酒を探しに出かける。
俺はこの季節が好きだ。
大地に振動が戻るこの季節が。
これらの終わりと始まりは大自然との間に交わされた固い契約。
例えいくつかの過ちを犯したとしても、この契約が洗い流してくれる。
そして新たにはじめるのだ。
【生きる】という我らの仕事を。』
ーーーーーーー
突然、一羽の鳥が中空より川辺へ舞い降り、"もの思う小石"を捕らえた。
なぜその鳥が石を掴んだか、その真意は知らない。
木の実と取り違えたか。
或いは気まぐれの戯れだったか。
兎に角、鳥は、もの思う小石を掴むと、一気に中空へとさらった。
もの思う小石は、その重力圧に心地よさを感じた。
ほんの数秒ではあったが、小石は空を飛んだ。
空を飛び、放物線を描き、着地したのは川の対岸だった。
ーーーーーーー
『ほう。
ではこの先の千年は、再びあの対岸に戻ることを夢見るとしよう。
さあ、春は始められた。
我らも仕事をしよう。
生きるという仕事を。』
[4回]
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