2024 11,21 19:50 |
|
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 |
|
2010 05,24 20:40 |
|||
■第四楽曲『Maria』http://www.youtube.com/watch?v=VzkkOP9Buas 『ゼロツーを連れてきたよ、マリア。。』 プレガンドの目はある種の郷愁を讃えているかのように、輝きに満ちていた。 俺はプレガンドの目線の先、液体で満たされた水槽の中の、闇の闇に目をやった。 ややあってマリアが姿を現した。 『マリア。ゼロツーだよ。もう体も完全回復に近づいている。』 彼女が招くような仕草を見せたので、俺は少し躊躇しながらも水槽に一歩近づいた。 透明素材の壁がなければ、互いに触れ合える距離だ。 俺は、まだ少し怖い。 ウォリアーが恐怖を感じるなど屈辱に思えたが、それはどうしても隠しきれなかった。 『怖いかい?ゼロツー。』 プレガンドが言った。 こいつにはどうやら俺の思う事はお見通しらしい。 癪ではあるが、奴の言う通りだ。 しかしここは、何も言うまい。 俺はプレガンドの言った言葉をあっさりと切り捨てた。 プレガンドはおかまいなしだった。 『さて、きみはいろいろと聞きたい事があるんだろう?』 『ああ、お前たちは俺の質問に対して一切答えた事がない。』 俺は若干語気を荒げて言った。 『そんな事はないだろう。』 プレガンドはクックッ、と殺すような笑い方をした。 陰気な野郎め。 俺も負けじと鼻で笑い返してやった。 『君に全てを教えるのは大変な苦労なんだよ。だから少しずつ。。』 俺は奴の言葉を遮って、奴の首を掴んだ。 いつでも喉ごともぎ取ってやる事が出来た。 もういい。 『茶番はよせ。』 俺はプレガンドに言った。 今まで使用した事のない怒気の音階で。 【やめなさい。】 プレガンドとは違う声に制止された。 誰だ? 俺の回路は一瞬混乱したが、すぐに状況の分析を開始していた。 その間、0.(ゼロコンマ)以下。 いや、、これは夢に出てきた声、、マリア。。。 俺は彼女の方を見た。 液体の中に泳ぐ彼女がじっとこっちを見ていた。 【あなたは以前のあなたではありません。あなたの持っていた力は今や全て失われ、新たな力となってその体に宿ったのです。乱暴に扱ってはいけません。】 マリアはしゃべっている様子はなかった。 ただ、ゆらゆらと液体の中を泳ぎながら、、しかしその視線は常に俺に向けられていた。 彼女の声だが彼女ではない。 俺はそう直感した。 『どうなっている?』 俺はプレガンドに聞いた。 掴んでいた首から手を離すと、奴はヨロヨロとその場に倒れ込んだ。 『ものすごい力だ。。それに素早い動き。。。』 確かに、、プレガンドの言う通りだった。 そう言えば、身体の機能が完全回復に向かうに連れて、俺はこれまで体験した事のない領域にエネルギーを伝達出来るようになっているのを感じ始めていた。 この感覚は一体? 『お、驚いたかな。。君は今や他のテクノピープルとは違う存在になったんだ。』 プレガンドが冷静に立ち上がりながら言った。 『違う?』 『そうだろう?マリア。』 プレガンドはマリアを見た。 【あなたが今使った力はUnlimited Emotion(規制干渉を受けない感情)。心の中心より湧き出る感情です。これは時には熱く、時には極めて冷ややかに、あなたの機械の体に作用します。】 まただ。 マリアは口を開く様子はなかった。 『思念だよ。』 プレガンドが言った。 『彼女はまだ幼年期だ。まだ肉体でしゃべる事は出来ない。だから思念で我々に呼びかけるんだ。』 思念。。。 『彼女は数万年、同じサイクルを繰り返しているクローンだ。体が朽ち果て新たなものに再生されることを繰り返して、やがて彼女の記憶はこの空間自体に膨大な蓄積量を持ったんだ。そして、肉体とは別個に語りかける術(すべ)を見つけた。今君に語りかけているのは、ここにいるマリアの声であり、過去の数多(あまた)のマリアの声なんだよ。そしてそれらは全てここにいるマリア、そのものなんだ。』 にわかに信じ難かったが、、、しかし現に彼女は俺に語りかけた。 【瞳を見せて、、、ゼロツー】 "マリア"が言った。 俺は半信半疑になりながら、おそるおそるマリアに近寄った。 【優しいまなざしね。そして何かに怯えているかのよう。。あなたが何に怯えているか、私には解ります。あなたが今恐れているのは自分自身。自分が何者なのか。どこからやってきて、どこに向かうのか。それが解らないから、あなたはいつもイライラしています。】 優しいまなざし。。? この俺が。 俺はキー・スティッカー。 俺の眼球に張り巡らされているのは、既に枯れ果てた毛細血管だ。 優しいなんて言われたのは初めてだった。 『あんた、、あんたに俺が語りかけて、、本当に会話出来るならあんたに問いたい。俺は一体何なんだ?ブラックスミスは俺の事を選ばれた者だと言った。』 【あなたはあなたです。あなた以外の何者でもありません。ただ、これまでのあなたは感情を持ってはいなかった。あなただけではありません。大半のテクノピープルが感情を持ち合わせてはいないのです。】 『そんな事はない。俺は今までも怯える事はあったし、怒りだって立派に感じていたさ。』 【プログラム。。。数式なのです。テクノピープルの感情は。プログラムは常にあなた方を制御するもの。マザーネットによってコントロールされているのです。しかしあなたが今持っている感情はプログラムではありません。時折制御不能に陥る事もあるでしょう。】 『そんな不便なものを。。。』 【あなた自身が思考し、見極めていく為の能力なのです。】 『何をだ?』 【見るもの全て。】 『なぜ。。なぜ俺を選んだ?』 【選ぶ?私は選んで等いません。もし選んだ、と言うならば、それはおそらく(神)の業(わざ)でしょう。私はあなたを(見つけた)だけに過ぎません。】 俺はプレガンドを見た。 プレガンドは 『言ったろう。私は無神論者だよ。』 といって首をすくめてみせた。 『フ。。』 俺は笑ってしまった。 『あんたは(神)なんだろう?ユニゾンはあんたを崇め奉ってるじゃないか。』 皮肉まじりにそう言っていた。 【あれは、、。彼らは間違っているのです。わたしはただ、、人間、という種族であるだけ。】 『そうかもしれないが。この数日間で俺の中で(神)という言葉ほど貶(おとし)められたものはない。』 【それをどう思うか、今やあなたは自由。私はその事であなたに何の助言もする気はありません。しかし、あなたはあなた自身を見つける必要があります。違いますか?】 『イーズ。。。あんた夢の中でイーズって名前を呼んでいた。何者だ?イーズとは?』 【イーズが何者かは、あなた自身が直接会って見極めてほしいのです。】 『信用出来る奴なのか?そいつは。』 マリアは黙った。 『一つ教えておこう。』 プレガンドが割って入った。 『君が信用していいのはマリアとウォリアーだけなのだ。その他は信用してはいけない。』 『ブラックスミスはあんたたちは信用していいと言った。』 『いや、我々も(完全に)信用してはいけない。我々はとても、、弱いのだ。しかし我々は君たちウォリアーを絶対的に信用している。なぜなら、君たちはその為に構築された個体なのだから。』 『またそれか。。。まあいい。そのイーズって奴はどこに行けば会える?』 【運命です。運命の導くままに。】 マリアが言った。 『なんだと?地図(マップ)は無いのか?』 『聞いたろう?運命だよ。我々テクノピープルが失ったセンス。時計仕掛けではない力、それを頼りに行くんだ。運命が君を彼の元に導く筈だ。、、、ところで、、君は、自分たちウォリアーの体の部分で一番固い部位を知っているかい?』 プレガンドの問いに俺は躊躇した。 考えた事もなかったからだ。 『スピアだよ。君たちがGPエアライナーと一体になる、意志と意志とを繋ぐ架け橋だ。実はスピアを生成する技術を持っているのはナナリアン(砂を纏う者)という種族だ。彼らにしかその技術は無い。』 『それがどうした。』 『イーズ、というのはそのナナリアンなんだよ。だからまずナナリアンを探すと良い。』 『それだけか?』 『それだけだよ。そうだろう、マリア。』 【ナナリアンがあなたをイーズの元へ導くでしょう。すぐに見つかるか、それとも数ヶ月、数年かかるか。。。でも時間がありません。急いでほしいのです。】 俺が思考を巡らしていると、プレガンドが俺の頭部を指差した。 『君が学習しなければいけない情報はすでに与えられている。少しずつで良い、咀嚼(そしゃく)していくんだ。』 【プレガンド!!】 マリアが言った。 【妖気です。邪悪を感じます。】 プレガンドの表情が一変した。 『硬化クローズ。』 プレガンドがそう言うと、マリアの水槽の透明壁が一瞬にして石化した。 マリアは消えた。 水槽は巨大な石の柱になっていた。 『どうした?』 俺は奴に聞いた。 『解らない。』 そういうと『コマンダー。』といって、なにやら交信を始めたようだった。 ややあって、俺とプレガンドの周りの床が割れると、四方に壁を作った。 またこの神出鬼没のエレベーターか。。。 俺とプレガンドは高速で降下をはじめた。 PR |
|||
コメント |
コメント投稿 |
|
trackback |
トラックバックURL |
忍者ブログ [PR] |