2024 11,23 18:48 |
|
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 |
|
2010 05,17 18:35 |
|||
■第四楽曲『Maria』http://www.youtube.com/watch?v=VzkkOP9Buas 砂が吹き荒れていた。 あるいは、摩耗した都市の一部だったか。。。 いずれにせよ、ここにも生気の痕跡はない。 砂のベールの奥で光る瞳の群を除いては。 ナナリアン。 砂を纏(まと)う種族。 機械の体を持ちながら、マザーネットの加護からは遠く見放された種族だった。 ここには体を修復する為の《Cradle (揺りかご)》もない。 古くなった体を自ら解体し、新しい物へと交換することで生きながらえる種族だった。 時折、ジャンク・ディストリクトより使者がやってきては、彼らの採掘する鉱石を分けてもらうのだった。 鉱石はテクノシティのいたる所で使われる鉱物資源だった。 テクノビルディングを構成する原料は主にこの鉱石だったし、乗り物、果てはテクノピープルのボディまで、この鉱物資源が担っている。 その日、この地区に足を踏み入れたジャンク・ディストリクトからの使者は、いつもとは違う様相だった。 いつもなら、グループでやってくる筈だが。。。 その使者は一人だった。 『鉱石が欲しい、、、ナナリアン。』 使者は言った。 『イーズです。イーズと御呼び下さい。』 『イーズ。。鉱石を分けてほしい。ただ、この事は内密に。』 『はい。どのくらい必要なのでしょうか?』 『そうだな。10万ラセルほど。』 『そんなに!?《小型戦艦》でも拵(こしら)えるのでしょうか?』 イーズは驚いて、その使者の瞳を覗き込もうとしたが、フードに隠れていて、またマスクもしていたのでよく見えなかった。 『用途などいかがでもいい。調達出来るか?』 やや高圧的な態度ではあったが、イーズは狼狽える事なく答えた。 『調達出来ます。いつまでにご用意いたしましょう?』 『明日までに。別の者が取りに来る。』 『明日!!??』 イーズは更に驚いてしまった。 そんな大量の鉱石を明日までに用意するのは不可能ではなかったが、そんな乱暴な注文の仕方は初めてだった。 『何か、、、はじまるのですか?』 『お前は何も聞かなくていい。知らなくていいのだ。』 イーズは使者の言う通り、それ以上は何も聞かなかった。 遠くより、GPエアライナーの音が近づいてきて、使者の傍に止まった。 『ハイロード・ウォリアー!!』 イーズは思わず口にした。 この地区でハイロード・ウォリアーを見る事はほとんどない。 使者は、GPに乗ったハイロード・ウォリアーに何かを告げると、ハイ・ロードウォリアーは頷いているようだった。 『もし』 イーズはたまらなくなって声をかけた。 使者とハイロード・ウォリアーが、振り返った。 『あなたはハイロード・ウォリアーですね、見せていただけませんか?GPエアライナーを。』 ハイロード・ウォリアーは何も答えず、かわりに使者が言った。 『彼らテクノローラーに興味があるのかね?』 イーズは頷いた。 『なぜだ。』 『わたしも大空を翔てみたいと思うのです。』 使者がクスリと笑ったように思えたが、相変わらずその表情は見えなかった。 『この者たちはそんなものではない。走る事しか知らないただの木偶(でく)の棒よ。』 しかしイーズは 『皆、何かしらそうです。わたしも鉱物を掘削することしか出来ません。なぜならそれは母(マザーネット)が私どもに課した仕事なのですから。しかし、わたしは思うのです。ハイロード・ウォリアーのように大空を駆け、あの雲に近づいてみたい。上空から見下ろすテクノシティはさぞ美しいのでしょうね。』 『美しい?』 テクノシティの中では美しい、という表現をする者はあまりいないので、使者は少し不思議そうに言った。 『はい。私は時折夢を見るのです。それはウォリアーが翔るような上空から見下ろした光景です。私はいつも幸せな気持ちになります。やがて光の渦の中へ。。大きな弧を描きながら落下していくのです。』 ハイロード・ウォリアーは鼻で笑ったが、使者がそれを制した。 使者はまじまじとイーズの顔を覗き込んだ。 この時、フードの影から使者の瞳が一瞬だけ見えた。 一瞬だったが、イーズはその瞳の奥に澄み渡る青に、深い安堵感を覚えた。 『。。。気が変わった。別の者が取りにくると言ったが、お前が鉱石を運ぶのだ、ナナリアン。。。いや。。イーズといったな?』 『私が?』 『出来るか?』 イーズは少し迷ったが、運搬用の大型キャリア・トレインを持っていたし、それを使えば可能だと思った。 『はい、そのようにいたします。』 使者は向き直るとGPの後部に乗った。 ハイロード・ウォリアーは何も言わずにGPエアライナーを起動させた。 爆音。 砂塵。 GPエアライナーが吸気音と共に浮上した。 イーズはそれを憧れの眼差しで見つめているのだった。 ※公式サイト更新しました。 PR |
|||
コメント |
コメント投稿 |
|
trackback |
トラックバックURL |
忍者ブログ [PR] |