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2010 05,11 23:30 |
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イラスト/テクノローラー_Emergence(創発)
■第四楽曲『Maria』http://www.youtube.com/watch?v=VzkkOP9Buas 『気分はどうだい?ゼロツー。』 プレガンドが《Cradle (揺りかご)》で治療(リハビリ)を受けていた俺に語りかけてきた。 『まだワイヤーシリンダー(筋肉)が固い。。。』 『まだ馴染んでいないのだろうね。すぐにスムーズに体を動かせるようになる、今まで以上にね。』 《機能回復は順調です。現在70%。》 俺に付き添っていたドクター・ボット(機械医師)が言った。 こいつらは俺たちと違って純粋な機械のようだった。 『そうかい?ドクター、私にはもうかなり完全に近い状態に見えるが。』 プレガンドはそう言って笑った。 《完全回復にはワイヤーシリンダー形成率40%、間接稼働コイルのエネルギー注入が30%、エネルギー循環系統、、、、》 『はっはっは、了解したよ、ドクター。』 《総合して30%の回復が必要。。。。》 『歩行器を用意してくれるかい?ドクター。ゼロツーに見せておきたいものがあるんだが。』 《用意します。》 そう言うとドクター・ボットは俺が横になっていた《Cradle (揺りかご)》を操作した。 あれから数日経つが、何の進展もなかった。 何の情報も与えられず、外に出る事も許されてはいなかった。 『まずは身体機能の回復が先だね』、そう言ったきりプレガンドの顔を見るのも久しぶりだった。 幽閉されたような状況に、俺は少なからず感じたイライラを隠せずにいた。 《Cradle (揺りかご)》のロボットアームが降りて来て俺の腰から下に歩行器をあてがった。 更に横から別のロボットアームが出て来て固定材を施した。 《歩行器のマウント完了しました》 ドクター・ボットが言った。 『ありがとう、ドクター。どうだい?歩けるかい?ゼロツー。』 歩行器のおかげでスムーズに動けた。 『問題ないようだね。申し訳ないが君の外皮の形成にはまだ時間がかかる。ブラックスミスが今それを構築中だ。完成すれば与えられた専用のURLで外皮を呼び出せるようになる。それまでこれを纏っていてくれないか。』 そう言って黒いローブを俺に手渡した。 リハビリ区画を出るとプレガンドと歩いた。 あいかわらず、この施設には俺たち以外の気配がない事に気付いていた。 『この施設の中ならこの数日の間に見た。』 プレガンドの見せたいと言うものに興味がない訳ではなかったが、幽閉されていたイライラからそう言った。 プレガンドはそれを察したように 『すまないね、沈黙していた事を謝罪しよう。しかし、君の身体能力の回復の方が最優先の問題だったからね。』 『ドミナントとか言ったな、目的は何だ?』 『ん。それもまず君には話しておかなければならないね。でもまずこの地下施設について話しておく事が先決だろう。ここには約550万人のテクノピープルが生活している。』 『何?』 驚きを隠せなかった。 周りを見ても俺たち以外には気配を感じない。 『どこにそれだけの。。』 しかし、それについてプレガンドは答えず、話を続けた。 『君も(創世記)を知っているね。全ての者に配布される、テクノピープルの根源について記述したテキストだ。』 『勿論。』 特に興味はないが。 プレガンドはつづけた。 『(いつしか彼らは稲光(いなびかり)を《母》と呼ぶようになった)。。ここで言う(母)というのがマザーネットを意味しているのは理解出来るね?』 『ああ。』 『天から稲光(稲光)が降りて来て、サイクロプスが望むとその体を機械の体へと変化させ、テクノピープルとマザーネットは共に生きる事になる。そうだね?これを君はどう思う?』 『あれはただの教典だ。事実は違う。事実はサイクロプスがマザーネットを構築した、というんだろう?』 『そうだ。肉体を脱ぎ去った時、その機械身体を維持管理する為に張り巡らされたシステム。それがマザーネットだ。やがて彼らは身体の管理以外の事もマザーネットに任せるようになった。マザーネットの管理がなければ、テクノシティは100年ともたないだろう。』 馬鹿でも知ってる事だったが、俺は黙ってプレガンドの話を聞いた。 『今や地上のテクノピープルのほとんどがマザーネットの信奉者だ。完璧な管理の恩恵で何の不自由もない生活を約束されている。そう言った意味ではマザーネットは確かに崇拝に値するのかもしれないね。しかし、地上の彼らは話す言葉、行動パターンまでもコントロールされている事に自分たちは気付いていない。ここにいる者は全てマザーネットのコントロールから逃れた者たちなんだ。身体の管理も含め全て自ら行わなければならない。】 【地上とは完全に遮断されている訳だな。】 【完全に、と言う訳ではない。ただし地上に出る際、たいていの者は一旦ここでのメモリーを消去される。一部の記憶を残してね。全て消去したら戻れなくなってしまうからね。記憶はコピーを取ってデータバンクに保存されているから、ここへ戻って来たら、また以前の記憶を復活させる事が出来る。】 【不便だな。】 【そうでもないよ。必要ものは大概揃っているしね。ここは一つの街だと言っても過言ではない。】 うっすらとこいつらの魂胆が読めてきた。 つまりドミナントというのはただのレジスタンスなのではないか、と考える。 笑わせてくれる。 たかだか数百万のレジスタンスに何が出来る。 それほどまでにマザーネットの力は強大だった。 以前にもそんな集団がいない訳ではなかった。 しかし、地上ではテクノピ-プルの目、そのものがマザーネットの監視の目だと言ってもいい。 すぐに発見され、制圧される。 街は30分と経たずに平和を取り戻す。 『さて。』 プレガンドが立ち止まった。 『ここからさきは声に出して話してはならない。君とわたしとの間に独立した秘密回線を引いておいた。以後、会話はこの回線を使用してほしい。テストをするよ。』 プレガンドがそういうと、俺の思念スクリーンの中でその秘密回線が開いた。 何やら奇妙な刻印も確認出来た。 【聴こえるかい?】 【ああ、聴こえる。】 【よろしい。問題ないね。では行くよ。】 【。。。どこへ?。。】 俺が言い終わるやいなや、四方の地面が割れ俺たちの四方を囲うと、俺たちは床ごと降下を始めた。 【エレベーターか ?】 【そうだよ。】 プレガンドは黙った。 俺はそれまでいた場所が施設の全体ではなく、別の階層が存在する事に少し驚いていた。 エレベーターは降下を続けた。 外は全く見えないが、体感出来る情報から分析すると(完全に正確な数字ではないが)おおかたの速度と距離の算出は出来た。 俺たちは、おそらくかなり速いスピードで、この施設の地中深くを目指している。 【施設にはいくつかの階層がある。それは君がいた階層と同様、すべて同じドーム型をしているよ。これは上から受ける重力を拡散する為の構造だ。】 プレガンドが言った。 【これから行くところはその最下層。】 プレガンドは俺と目を合わせる事なく、前を見たままそう言った。 【そろそろ言ってくれないか?ドミナントってのはレジスタンスの事なんだろう?】 俺は半ば皮肉まじりに聞いた。 それに対してプレガンドは口調を変化させる事なく淡々と答えた。 【ドミナントの結成は今から約1万年前。(マリア)の存在が発見された事に始まる。われわれが彼女を発見する以前、彼女は更に数万年の間ひとりだった。彼女が発見された経緯についてはおいおいお話しするが、我々が驚いたのは彼女の記憶の底に沈殿していた、我々と彼女たち(人間)に関する情報だった。この情報は我々の存在に大きく関与する。それは失われてはならない情報だと認識された。以来、我々はマリアを守るべく地中深くに潜伏した。】 【守る?誰からだ?】 【マザーネットだよ。(魂)の復興の為、マリアの保護が最重要課題だった。】 【魂の復興?なんだそれは?】 【それを今ここできみに話すつもりはない。それより、今は何が脅威なのかを理解する時だ。】 【脅威?】 【急を要する事態になったのでね。】 エレベーターが止まった。 【くれぐれも言っておくが、けっして声に出して話してはいけない。】 プレガンドがそう言うと、俺たちの四方を取り囲んでいた壁が一斉に床に収納された。 そして俺は、目前の光景に驚愕した。 PR |
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