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2010 05,08 22:02 |
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イラスト/テクノローラー_マリア
■第四楽曲『Maria』http://www.youtube.com/watch?v=VzkkOP9Buas 『な、なんだ!?こいつは!?』 水槽の中に居たのは生物だった。 しかもそいつは俺たちのような機械の体ではない。 『。。肉だ。。』 極めて柔らかそうで、何よりも弱そうなその体。 俺は《肉》を見るのが初めてだった。 いや初めてだと思っていた、その時は。 更に驚いたのは、そいつが双眼であった事だ。 何故に目が二つも必要なのか、俺には理解出来なかった。 一つは予備の為のものか?? こんなにのっぺりとした構造で、はたして身体としての基本的な動作を担えるものなのだろうか? しかし、よく見るにつけ、俺はそれまで感じた事のない感覚も感じ始めていた。 『彼女の名はマリア。人間という種族だ。』 背後からの声に驚き振り返った。 『そして今、君が感じているであろう感覚は"はかなさ"というものだ。』 すぐさま俺の思念スクリーンの中で状況分析が始まった。 ターゲット・カーソルが3体のテクノピープルを捉えた。 その間、0・(ゼロコンマ)以下の時間。 『!!』 俺は瞬時に凍り付いた。 3体のうち一体は通常のテクノピープルの形状、その後ろにディーゼルワーカー、そしてもう一体は驚くべき事にクラーケンだ。 『クラーケン!!』 俺は咄嗟に身構えた。 思念スクリーンの中で《戦闘態勢》に突入した事を示す表示が赤く点滅し始めた。 『彼は大丈夫だ。』 最初の声の主が俺に語りかける。 『彼も以前は確かにテクノポリス(クラーケン)の一員だった。しかし今は我々の仲間なのだよ。彼の名はコマンダー。そしてこちらがブラックスミス、見ての通りのディーゼルワーカーだよ。』 紹介をうけた2体がそれぞれ会釈をした。 一歩前へ出てまた一歩下がる。 奴らの体重でドス、ドスと地鳴りに似た足音が木霊した。 俺はまだ戦闘態勢を解いたわけじゃなかったが、そいつはおかまいなしといった風に話を続けた。 『君は生身の肉体を見るのは初めてなのだろう?いや、正確には覚えていない、そう言った方が正しい。』 俺たちは再び水槽に注目した。 『哀れ、彼女たちはこの水槽から出ては生きてはいけない。なぜなら彼女たちの体はこの星の大気にはなじまないのだよ。』 『彼女たち。。?』 俺はまだぴりぴりとした口調でそいつに聞いた。 『あ、申し訳ない。彼女たち、ではなく彼女、と一人称で言うべきだったね。彼女は《人間》という種族の最後の一体。そのクローンなのだ。この水槽の中で生まれ、育ち、老いてやがて安らかに永遠の眠りにつく。そしてまた、この水槽の中で新たに産まれる。もうそのサイクルを数万年の間繰り返している。彼女たちの生態は本来ならば男女が番(つがい)となり子を産む事で繁栄してきた。しかし最後の一体となったので、やむを得ずこうして管理のもと種の保存を行っているのが我々だ。』 『ペットのように飼いならしているというわけか?』 俺の言葉にそいつは笑いをこらえきれないようだった。 正確には、笑う信号を俺がキャッチした。 そいつは笑いながらつづけた。 『ボスだよ。彼女は我々のボスなんだ。』 ボス。 俺は何がなんだかさっぱりだった。 『君はGPエアライナーとともに大破したんだろう?どんな感じだった?』 どんな感じ。。。俺はクラーケンに追われていた。その時GPが理解不能の言語で話し始めて、俺のGPは恐ろしい加速を始めたのだった。そして、あまりのスピードに俺の体は耐えきれなくなり(GP本体すら耐えきれなかった)。。。。 『そして崩壊、大破した。そうだろう?』 『お前たちが俺をここへ連れてきたのか?』 当たり前といえば当たり前の質問をぶつけてみた。 しかし、やつはその質問には答えず、一変してまじめな口調でしゃべり始めた。 『GPがゴーストトークを始めたらゴッドスピードの予兆。そんな都市伝説を聞いた事があるかね?』 俺は頷いた。 『君が体験したあの急加速は、ゴッドスピードの力の一部。こんなセンスのない名前誰が付けたのか知らんが、神の業とは笑わせてくれる。あ、失礼。わたしは無神論者なのだよ。まあ、それはいい。それから君が耳にしたGPのゴースト・トークだが、あれは亡霊の声などではない、彼女(マリア)の種族の言語、彼女の声なのだ。即ち、、、』 俺は背筋に寒気を感じ始めていた。 『ゴッドスピードは彼女たちの種族の技術だ。まあ、それについてはおいおいお話しするとして、、、君はつまり彼女(マリア)に召還されたのだよ。』 『召還?』 『マリアが君の助けを必要としている。』 俺は思わず吹き出した。腹の底から笑った。 俺に何の力があると言うんだ? 俺はただのハイロードウォリアー。 走る事を強制されたテクノピープルのポンコツだ。 狂ったように走り続ける。 おまけにキー・スティッカー(※メジャー・キー常習者の事)。 生きる事などとうの昔に廃業してしまった。 そんな俺に一体何が出来る? 俺の事を必要としていると言うならば、それはきっと人違いだろう。 笑いの止まらない俺の様子を見て、奴が口を開いた。 『君は夢を見るのだろう?』 おれの笑いは止まった。 『実はそういうウォリアーは君だけではない。君のような(夢を見る)ウォリアーが着実に増えつつある。君が初めてではないのだよ。君たちハイロードウォリアーは、自分たちが何故(なにゆえ)に走り始めたのか、理由を知るまい。それも時とともに理解出来るようになる。一度に多くを叩き込んでも混乱するばかりだろうからね。まあ、まずはマリアを見たまえ。』 そう促した。 『小さいだろう?これは幼年期の形態だ。時間を重ねるごとに大きくなる。言葉も話すようになる。これを成長と言う。こんなことテクノピープルには理解できまい。さっきも話した通り、本来なら彼女たちは青年期に入ると番(つがい)になり、新たな生命を誕生させる事が出来る。そうやってこの種族は命だけでなく新たな考え方、精神、思想までをも生み出していたのだよ。それを《進化》という。生命とは元来そうあるべきものなのだ。我々もかつてはそうだったのだ。』 『何?』 奴は口を閉ざした。 俺が今察知した最大の疑問をここで解決する気はなさそうだ。 水槽の中の彼女(マリア)が俺の方へ近寄ってきて、手を差し伸べた。 水槽の中で俺の頬を撫でるような仕草をしている。 俺はそんな行為をされたのは初めてだったから戸惑った。 『君の事を好いている。』 奴が言った。 俺の体が何かしらない熱を感じた。 この感覚は何だ? 回路の奥の奥からわき上がってくる。 それはとてつもない安心感に似ていた。 『君が今感じているのは《慈しみ(いつくしみ)》というものだ。マリアが君を慈しんでいる。』 慈しみ。。。。 水槽の中の彼女(マリア)が微笑したように思えた。 俺は気を取り直して奴を振り向いた。 『お前は?』 『おっとこれは失礼した。わたしの名はプレガンド。ここの責任者だ。そして《我々》は【ドミナント】。マリアを中心とした秘密結社だ。ここはテクノシティの最下層のジャンク・ディストリクトよりもはるかに地下。マザーネットはここの存在を知らない。』 PR |
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