2024 11,23 22:37 |
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2010 05,05 21:32 |
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イラスト/テクノローラー_ゼロツー崩壊
■第三楽曲『ゼロツー』 『-発動。-』 それは明らかにGPエアライナーから発信された信号だった。 GPエアライナー内部の動作は電気信号として解析され、スピアを通して俺の電子頭脳に報告された。 それはとても不可解な接続と暗号の繰り返しだった。 おれのすぐ背後にはクラーケンが、もう手の届く位置まで近づいていたが、俺はどうすることも出来ない。 GPエアライナーは完全に制御不能だった。 やがて、GPの発した信号は、マザーコンピューター深部のシークレットゲートに到達し、ゲート本体と解読不能の問答が始まる。 これらの出来事は全て0.(ゼロコンマ)以下の時間内に行われていた。 俺のGPはついにシークレットゲートの認可を得ると、モニターに見た事もないURLが掲示され、それにアクセスした。 一瞬。 いや刹那と呼ぼう。 その刹那に俺とGPを取り囲んでいた『時間』が限りなくゼロになった。 しかし、俺がそれらの事に対し、何らかの思考を開始する前に、酸性雨は弾丸となった。 GPが驚異的なダッシュを始めたのだ。 俺はそのG(重圧)に引きちぎられる思いだった。 GPを制御するどころか、しがみついているのがやっとだ。 『な、なんだ、、、このスピードは。。。。。』 そんなスピードは初めてだった。 いや、、それがスピード(速度)と呼べるものであるならば。。 おれは光学センサー(光学反射センサー)で背後にいたはずのクラーケンを確認しようとしたが、検知不能だった。 それはつまり光の速度を超えたスピードでGPが走っている事を意味していた。 ついに俺の体はその速度に耐える事が出来なくなり崩壊した。 大破。 ブラックアウト。 PR |
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2010 05,04 20:08 |
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イラスト/テクノローラー_魔笛
■第三楽曲『ゼロツー』 魔笛。。。 魔笛だ。 俺は我にかえった。 しくじった。 俺の背後には魔笛を鳴らしながら獲物を喰らおうとする『憎悪』が張り付いていた。 クラーケンだ。 闘争本能を呼び起こそうと思ったが、※(1)キーの切れかかった俺の体は、どうしようもないダウン症状に陥っていた。 気がつけば他のウォリアーは危険をいち早く察知し、飛散していた。 降りしきる酸性雨の中、俺とクラーケンだけが暗闇の輪舞曲(ロンド)を踊っているようだった。 《これまでか。》 まあ、べつにどうと言う事はない。 どうせ何の為に生きるのか、いや、生きている事すら確証のなかった白昼夢。 欲しがるならば、この体、魂ごと持って行くがいい。 おれはそのクラーケンに全てをくれてやろうと思った。 その時、俺の思念に、俺とは別の侵入者が割り込んできた。 《なんだ??》 目には見えない何者か。 おれは今までこんな言語を聞いた事がなかった。 解読不能。 リトライ。 解読不能。 リトライ。 そして、その侵入者はようやく俺にも解る言葉を発した。 やつははっきりとこう言った。 《ー発動。ー》 ※(1)キー/メジャー・キーの略。麻薬。 |
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2010 05,03 21:56 |
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イラスト/テクノローラー_ゼロツー
■第三楽曲『ゼロツー』 《02(ゼロツー)》。 そう呼ばれるウォリアーがいた。 名前など存在しようがしまいが、関係はあるまい。 テクノシティにおいて名前など、個体数を管理する為に刻まれた製造の刻印に過ぎないのだから。 それよりは特徴を捉え、個人を的確に言い当てるニックネームの方が良かった。 自分が生命である事を再び認識し、束の間の感情の喜びを感じる事が出来たのだから。 例えそれが自分を馬鹿にするような内容であったとしても、異論はなかった。 ゼロツー(けっして一番にはなれない者)。 その呼び名は彼を定義付け、彼が彼として存在するに充分な材料だった。 彼が他のテクノピープルと大きく違う点がいくつかあった。 まず、ハイ・ロードウォリアーであるにも関わらずスピードにまるで興味がなかった(とは言え、生身の人間にはイメージすら叶わないスピードで走るのだが)。 他のウォリアーがいくら勝負を挑んで来ても、応じる事は無かった。 早く走る事こそウォリアーの存在意義。 スピードによる戦闘意識こそウォリアーの至高の魂。 得体の知れない意識体に、理由もなく走るようにプログラムされたウォリアーにとって、彼のように自ら戦闘意識を放棄するものの存在価値は無いに等しかった。 また彼以外にはあり得なかっただろう。 ウォリアー以外の一般のテクノピープルまでもが彼の事を、 『恐れをなした狼』 『牙なき魔人』 といって馬鹿にした。 こういった一切の罵りを、彼は別段気にした事も無かった。 《遅い》と言う事は、彼にとって最も愛すべき行為だった。 もう一つ彼の特異点をあげるとすれば、それは彼が夢を見た事がある事だった。 否、一度や二度ではなく、おそらく毎晩のように彼は夢を見た。 《果てしない思い出》《果てしない記憶》を持つテクノピープルにとって、《夢を見る》という現象自体が珍しかった訳ではない。 テクノピープルは膨大な記憶データの海から、好きな時に好きな記憶を引き出し、個体の電子頭脳に《夢》として再現する事が出来たのだから。 あるいは記憶の断片を繋ぎ合わせ、新しい夢を作り出す事も可能だった。 そういった意味では、この記憶の海と言うのは無限だったのかもしれなかった。 彼が見るのは、これらの自在な夢ではなかった。 かつて《夢》が、《夢》たりえた時代、夢は個人が『作り出す』ものではなかった。 その時間は与えられ、強制されるものだった。 であればこそ、それらは神秘の輝きを放ち、時には未来を授かる時間でもあったのだ。 夢を見る時間、彼は自由ではなかった。 =大きく弧を描き、下降する夢。= 大地に叩き付けられ、バラバラになる。 痛みは無いが、やがて蝋燭の炎が消えるように、魂を失うのだ。 他の者に言わせると、『それは無い。』という。 マシンである彼らにとって、死とはジャンクとなり、新たなマシンの一部として再生する事だと言う。 『魂は失う事は無い。ただ、二度と自分の思い通りにならない体を手に入れるだけの事さ。』 彼はそれを畏れていた。 しかし、ゼロツーは夢の中で魂を失う。 その先にあるものは永遠の『無』。 あるいは。。。 考えるだけ無駄な事だ。 だが、結末を知るものにとって、この夢が彼の未来の永遠の終焉を暗示するものではない事は、容易に推測出来た。 彼はその夢に悩まされ続けていた。 いまいましい夢に打ち勝つ方法はひとつだけあった。 『メジャー・キーをくれ。』 彼はそう言った。 『よせばいいのに。』 哀れみにも似たつぶやきを漏らしながら、ディーラーがアンプルと注射器をゼロツーに渡した。 彼らテクノピープルに効く麻薬は2種類あった。 一つはデータによる麻薬で兵器として開発されたものがジャンク屋を中心とする闇ルートから出回ったもの(元々はコンピューターウィルスだった)。 電子頭脳に作用し、一時的にその機能を部分的かつ断続的に停止させる事により、いわゆる《ハイ》と呼ばれる状態を作り出す。 一般的には《ハイ・ファイル》と呼ばれた。 これに関しては、危険は少なからず伴うも、対処することが出来た。 テクノシティにすむ者の約半数がハイ・ファイルの常用者だったこともあり、万が一悪いデータが体内に残ってしまった時のためのクリーンナップ・ファイルが出回っていたし、体内の回路自体をハイ・ファイル用にチューンナップする技術も一般的に浸透していた。 もう一つはいわゆる薬品である。 テクノピープルの唯一の生体組織である眼球に直接注射する事で、生体組織から送られた微弱な電気信号が神経回路に作用、覚醒状態をもたらすものだった。 この方法は彼らの寿命(その定義も今となってはあやふやなものではあるが)を著しく縮める方法だった。 一度手を出せば、永遠に続く禁断症状に悩まされる事になる。 禁断症状は地獄の苦しみだった。 排泄、という言葉すら知らない彼らは、自分の体内に全ての苦しみを閉じ込めるしかない。 彼らの種が始まってからの、全ての苦しみ、悲しみ、恐れはシティのマザーコンピュータに蓄積されている。 そういったありとあらゆる《怨念》が入れ替わり立ち代わり個体に襲ってくる。 それが禁断症状。 これは並大抵の者には到底耐えられるものではない。 発狂するか、新たにメジャー・キーを投入する意外にそれを止める術はなかった。 彼らは禁断症状を《マイナーな気分》と例え、麻薬の入ったアンプルを《メジャー・キー(気分を良くする鍵)》と呼んだ。 服用者を見分ける方法は容易だった。 薬の影響でゼロツーは眼球が小刻みに震えるのを抑えられずにいた。 彼は制御の効かなくなった眼球とは裏腹の精密さで針を刺した。 注射器の中の液体は全てゼロツーの眼球に注入された。 眼球の破裂しそうな感覚にしばらくは耐えなければならない。 それは彼らテクノピープルが残した最後の《痛み》だった。 想像を絶する痛みは、時に彼らを狂わせる。 《メジャー状態》になりきれないまま機能が停止状態に陥る者も少なくはない。 機能停止は、即ちジャンクを意味している。 メジャー・キー注入直後の状態は、たとえゼロツーのようなヘビーユーザーでもけっして慣れる事は無かった。 ゼロツーはその頭を壁に打ちつけて苦しみもがいた。 あたりに響く、鈍い金属音。 その衝撃にかろうじて耐える電子頭脳。 彼が肉体を持っていたならば、何かしらの赤いものが流れていたに違いない。 断末魔のような光景。 やがて彼は顔を上げるのだ。 その瞳はもう震えてはいない。 恐れを知らないウォリアーの目になっていた。 瞳に絡み付いた枯れた毛細血管は再び液体で脈動し、自分が最早マザーコンピューターのネットワークの一員では無い事を、青白く象徴していた。 ゼロツーはGPに股がった。 彼のふくらはぎから伸びたスピアがGPエアライナーの側部ににあるポッドに突き刺ささると、GPが吠えた。 ゼロツーはGPを、愛する者にそうするかのように愛撫した。 そして、彼の電子頭脳はGPと一体になった。 『走れ』 そう思念すればGPは走る。 一体のウォリアーがゼロツーに仕掛けて来たが、彼は相手にしなかった。 そのウォリアーはゼロツーに戦闘意識が無いと察知すると、別の獲物を求めて去った。 ゼロツーがその瞳に見ていたのは空だった。 一面が濃度の高い大気で覆われたそれは、世辞にも美しいとは言えなかっただろう。 しかし広大なその雲のスクリーンは、唯一ゼロツーを解放へ導く存在だったのかもしれない。 黄色い狼は、爆音とともに急上昇した。 空へ。 吸い込まれるようだった。 大きな弧を描きながら急上昇するのだった。 |
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2010 05,03 01:24 |
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イラスト/テクノローラー_コンテナシップ内部
■イメージ音源『ブレードエリア−628』 『こいつがテクノキッドか。。』 テクノローラーの中でも最速を誇るという、、、 俺はそんな事をぼんやり考えながら、ジャンク・ディストリクトから浮上したコンテナシップの中にいた。 狭い防音窓から流れ込む光が奴のシルエットをくっきりと浮かび上がらせていた。 GP乗りの中でも腕利きの奴らがその周りを取り囲んで、じっと出番を待っていた。 じきに628mの上空に達する。 シティの各階層に配備された犬ども(クラーケン)に気付かれるのは時間の問題だ。 最初の数機は外で誘導している奴らでなんとかなるだろう。 しかしその後は。。 ふっ、まさか俺がこんな事に巻き込まれるとはな、、、 話を数ヶ月前に戻そう。 |
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2010 05,01 21:09 |
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